「ベンチャー企業の社長さんたちには、どう企業を立ち上げてどう発展させるかという話が一番興味あるやろ。
けどとどのつまりがこれは人材の話になってくるんやな。
どこの中小企業の社長もみんな同じことを言うやろ。
『ウチの製品はすばらしい! しかし社員がどいつもこいつもぼんくらで、いっこも働きよらん。だからウチの会社は伸びひんのや』
という調子や。
しかしこれは結局は社長が『私は無能です』と告白してんのと同じことや。だからまず人材をどうやって確保するかというベンチャー企業が最初に突き当たる問題から話しよ。」
「当時私とあと二人ほどで独立して『自分たちの技術を活かそう!』と梁山泊のような気分で会社を作った。
今から考えたら大した技術力でもなかったんやが、当時は私らは資金も知名度もないが大変優れた技術力だけはあると信じて独立したんやな。」
「それで名前は日本電産という名前にしてしもたのやが、これも大それた社名や。
なんせ日本電気と松下電産をくっつけたような社名で、心意気だけは日本電気や松下電産と互角に競える企業になろうとか思っとったが、実体は私の実家の牛小屋を改造した納屋に男3人立てこもって、何から手をつけたらええんかさっぱり分からんという状態やった。」
「何をするにもこの3人だけでは何もでけんから、とりあえず将来の幹部候補生になる優秀な人材を採用することから始めようということになった。
しかし大学の就職課や職安に求人票を貼ってみたが、新卒なんて壊滅的に来んし職安から来る応募者はろくな奴がおらん。
我々もそんなに自慢できる大学の出身者やないが、その我々でさえも聞いたことないような三流、四流大学の成績もどうしようもないような奴ばっかりが応募してきよる。
大学の電気学科を卒業してるのに『フレミングの左手の法則』も知らんような奴ばっかりが応募してきて、使い物になりそうにないのでほとほと困って、オヤジに『ろくな奴が来よらん』とぼやいた。」
「そしたらオヤジに
『お前はアホか』
とどやされた。
『お前らみたいな得体の知れん男が3人牛小屋に立てこもっとるようなワケワカラン会社に、そんな成績優秀な人材が応募して来るとホンマに思とったんかいな』
とこうですわ。
『そんならオヤジ、どうしたら優秀な人材が採れんねん?』
とオヤジに聞くと
『まぁ、ワシの軍隊時代の経験からいうと、メシの速い奴は大体仕事も速いわな』
という話やったので、面接試験では応募者に必ず飯を食わせることにした。
それで飯が速かった順番に採用を決めることにした。」